カテゴリ:森の徑  [Ⅰ] 自然林( 3 )

 森 の 徑  [Ⅰ] 自然林

 (2) 函南原生林 跋渉

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                      県道20号線脇の函南原生林

 熱海から箱根へ十国峠を越えて入る県道20号線(熱海箱根峠線)沿いの「鞍掛山」(1004m)の中腹に広がる函南原生林は、江戸時代からの禁伐で護られて来た広葉樹の原生林です。400~700年という樹齢の大木が多いことから、「大樹林」とも称ばれています。

 南関東の太平洋側の森ですから、ブナをはじめ、ヒメシャラ、ケヤキ、オオモミジ、などの落葉広葉樹のみならず、アカガシ(ブナ科コナラ属)などの常緑広葉樹も混じり、多彩な樹木が見られます。しかしその反面、林床はスズタケ(笹の一種)が密生し、乾燥しすぎのためか、ブナの幼木実生などはほとんど見られません。大木の下には常緑低木のアオキやシキミなどが生えている斜面もあります。

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林床を埋めているのは、スズタケとハコネダケ(外来種だそうです)です。
林内の2.5kmの道は丸太を並べた階段で、標高差300mのアップダウンがあり、歩幅の小さい身には歩き難く疲れます。
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  アオキやシキミの赤い実。アオキの葉汁には解熱効果があるそうですが、シキミは木全体が猛毒です。

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                       ブナの巨木
 樹齢700年のブナ巨木です。樹木は、根から葉先への水分や栄養の流れは樹皮に近い部分で行い、幹の中心部はただ全身を支える役目しか果たしていません。従って、老樹では早く腐ったり空洞になったりして、大木ほど若木の数倍の風圧を受けるわけですから、それに耐えて立っている姿は傷ましい感じさえします。

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                        アカガシの巨木
 樹齢800年のアカガシの巨木で、日本屈指の大樹です。幹に苔をまとい、魁偉な姿をしています。

 ◆ アカガシ (赤樫)
 ブナ科にも拘わらず、常緑広葉樹で、ブナよりも西南日本に多く、比較的高い山地でも見られる高木です(25m前後)。
 丹沢、箱根、伊豆あたりは、常緑、落葉樹の混成林が多い地域です。
地球温暖化が進んで、ブナ帯が大幅に減退すれば、その後に侵出して来るのがアカガシなどの常緑広葉樹だろうと当然推測できます。厳密には最も寒い月の平均気温が-1℃に当たる地帯(標高)が常緑樹と落葉樹の境界線だという研究もあるようです。しかし、温暖化とは、気温のみの変化ではなく、降水量、積雪量、風の状況などの相関関係が変わるわけですから、そう単純ではないかも知れません。

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ケヤキ(欅)の大木
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 ◆ ヒメシャラ (姫沙羅)
 ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。伊豆半島、箱根以西の太平洋側のブナ帯に多い木で、この一帯では純林も見られます。樹皮が赤褐色で薄く剥がれ、模様が目立ちます。

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                       アカガシの倒木
 樹齢400年のアカガシの老木が平成4年の台風で倒れ林道を塞いだものです。また長い年月を掛けて土に戻って行きます。

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                   涸れ沢沿いの木々も紅葉をはじめていました。               
                    函南原生林 跋渉  (終)  
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by palette01 | 2007-11-18 15:07 | 森の徑  [Ⅰ] 自然林

 森 の 徑   [Ⅰ] 自然林

 
 ◆ ブ ナ (橅)
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            深い森は まさにブナの純林にも見えます
     
             … 森の徑はさらに深く奥へと続く …
 
 奥只見の膨大な水資源は、東北電力の奥只見ダムで発電され、慢性的な電力不足に悩んでいた戦後の首都圏の復興に大きく貢献したと言われている一方で、森林資源の樹木は、その深過ぎる森林のため、伐っても材の搬出が困難であったことが幸いして原生林として残ったそうです。

 ブナは、日本の寒冷地 (6℃~13℃ 関東では標高800~1600mの山地) の自然林を代表する樹木で、生長が余り早くなく、高木は30m位、平均寿命は300年と言われています。また俗に、幹の直径のおよそ3倍がその木の年齢だという話もあります。(径が100cmの木の年齢はおよそ300才) ここでは、200年はゆうに超えているブナが次々に現れます。
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 日本海側のブナは、太平洋側のものに較べて樹皮が白く、その上に地衣類、苔類などが着生して独特の見事な模様を隅どります。

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 ブナの枯木や倒木には、ツキヨタケ(毒茸)、ムキタケ、ブナシメジ、ヒラタケなどの茸が着生します。ツキヨタケ以外は食べられるそうですが、みな形姿が似ていて素人には見分けるのが難しく、手を出さない方が無難とは、専門家の忠告です。この写真でも区別は出来ません。



 ◆ トチノキ (橡)
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 トチノキは、サワグルミやブナなどと共に、渓畔林(沢、渓沿いの森)の代表的な樹木です。湿潤な土地に大木が多いようです。1000年を超え、35m位の巨木も話題になります。昔はその太い幹を刳りぬいて臼に利用されました。

 クリに似たトチノキの実は、生では灰汁が強くで食べられないが、長く真水に晒して毒を抜き、「トチ餅」にします。昔はこれが飢饉の時の救荒食として大切にされたそうです。地方によっては、山主は娘の嫁支度にトチノキを付けて嫁がせる習慣があったということです。
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                   トチノキの実生
 
 手の平に似た5枚~7枚に分かれた小葉は、掌状複葉と呼ばれ、これ全部で一枚の葉です。少しでも多くの光が欲しくて、実生や小木の時から大きな葉を広げているわけです。



 ◆ ミズナラ (水楢)
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                   ミズナラの大木 (左はブナ)

 ミズナラも、ブナ同様、寒冷地の代表的な落葉広葉樹です。棲息気温、分布帯なども似ていますが、ブナよりもやや乾燥した土地を好むそうです。関東では、奥日光で純林が見られます。北海道では平坦な地形を好むミズナラには好適地のようです。その実は、リスやクマの大切な食料です。
 
 特に、北海道産のミズナラは、家具材として世界に知られ、欧州では Japanese oak とよばれて昔から愛好されています。虎斑(とらふ)というその美事な木目が珍重されるようです。
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                       ミズナラの実生

 ミズナラも、分類上はブナ科コナラ属ですから、葉の形は大きいけれどもコナラの葉によく似ています。両方の葉も共に外周に鋸状の切れ込み(鋸歯という)があります。


              奥只見川源流域原生林 跋渉  (終)
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by palette01 | 2007-11-06 10:25 | 森の徑  [Ⅰ] 自然林

 森 の 徑   [Ⅰ] 自然林

 
 (1) 奥只見川源流域・ブナ、トチノキ原生林 跋渉

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             奥只見湖 尾瀬口 (越後三山只見国定公園)
 
 上越新幹線・浦佐から奥只見湖ダムサイトまでバスで一時間余。奥只見シルバーラインは栃尾又温泉など山深い温泉郷を経由して、全長22km中18kmがトンネル道です。さらに、ダムサイトから只見川源流方向に渡航する定期船で40分で新潟側の入り口、尾瀬口に到着。またバスに乗継ぎ、やっと小沢平の登山口から入山。

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            深い森には小さな沢や湧水が多く、全て源流に集まります。
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                … 森の徑はさらに深く奥へ続く …

 標高900~1200mで、ブナ、トチノキの原生林ですが、その他、渓畔林らしくサワグルミ、カツラ、ミズナラなど多種類の大木が不伐のまま残されています。
 小さな山徑は険しく、時には崖沿いに高巻きし、また沢を渡り、僅か3km余りを、次々に現れる大木を撮りながら、およそ3時間掛けて、やっと最奥の渋沢(シボサワ)温泉小屋に着いたのは昼過ぎでした。




 
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by palette01 | 2007-11-04 13:10 | 森の徑  [Ⅰ] 自然林